2008年2月6日発行
━━☆ 夢現 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ゆめげんクリニック・プロジェクト メールマガジン Vol.4
http://jin-i.com/yumegen
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みなさま、こんにちは。
ゆめげんクリニック・プロジェクト事務局の中山です。
本メールマガジンは、「ゆめげんクリニック・プロジェクト」の
ホームページまたはメルマガポータルサイト「まぐまぐ」から
ご登録いただいたみなさま及びパートナー企業・医療機関のみなさま、
そして、当法人事務局スタッフが名刺交換させていただいたみなさまに
お送りしている情報メールマガジンです。
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● もくじ
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【1】はじめに
【2】今月のテーマ:家庭医療 (ファミリードクター)
【3】ゆめげんドア
● 編集後記
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【1】はじめに
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みなさま、
ゆめげんメールマガジン第4号をお送りいたします。
またまた発行が遅れてしまいました。
しかも、今回は予定より1週間以上も遅れてしまいました。
申し訳ございません。
実は、発行予定日前に執筆者の「くに」から原稿をもらっていたのですが、
血も涙もない編集者「よし」は、
「自分が賭けようと思っている家庭医に対する情熱が伝わってこないじゃないかあー!
もっと気合いだ、気合いだぁ!気合いだぁ!気合いだぁー!」
と、一人で吠えて
大学院の疫学・統計学の勉強で四苦八苦している「くに」に
原稿を何度も何度も突き返しては、
顔をあわせるたびに、「原稿はまだ?」と矢のような催促をしていたのでした
・・・まさに絵に描いた冷徹な取立人。
あ〜あ、こわいこわい。(ごめんね、くに)
さて、静かな文章の中に「くに」の秘めた想いが
みなさまに伝わってきますでしょうか。
ご一読いただければ幸いです。
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【2】今月のテーマ: 家庭医療(ファミリードクター)
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「家庭医療」ということば・・・
最近良く聞かれるようになったように思いますが、
みなさんは耳にされたことはありますか?
私が考える家庭医とは、
“患者さんとそのご家族の健康を守るパートナー”
お子さんからお年寄りまで
ご家族全員が日常生活で
体のことでちょっと気になることがあるときに
気軽に相談でき、
ご家族が健康に過ごせるように
健康を一緒に管理し、
いざ病気のときは
頼りになる存在、場所だと考えています。
世界家庭医機構:WONCA(注1)や
日本家庭医療学会の掲げる「家庭医」は
もう少し詳しく定義していますが(文末:ゆめげんドア参照)
一言で表現すると、
『患者さんと医療従事者が、
人間的な関わりをとおして医療を共に行う』
ということなのではないかなと、思っています。
■ 英国の家庭医療
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日本では、役所に登録し、国民健康保険証をもらい、
それを持って行けば、診察を受けられますよね。
英国の場合、自分のかかりつけ医になる家庭医にいって、
その家庭医に登録することで、
自動的に国民健康保険に登録する仕組みになっています。
私が、英国で初めて家庭医に行ったのは、2年半前のことでした。
英国では家庭医のことを
「ジェネラル・プラクティショナー(GP)」
と呼ぶのですが、
私のGPはインド系のとても穏やかな感じの先生でした。
そして特に印象に残っているのは、
診察室がとても病院らしくないということでした。
10畳くらいの広い部屋で、木目調の内装に木の机、
机の上にはコンピュータと筆記用具、
落ち着いた明かりに柔らかい椅子、
そして、部屋の片隅に診察用のベッドがありましたが、
処置器具や薬などはなく、
日本の診察室のイメージとはとてもかけ離れていました。
先生は始終ゆっくり話を聞く雰囲気を作っていて、
自分の体調の説明や質問などをする時間もありました。
GPのクリニックは完全予約制で、
一つのクリニックに数人の医師(GP)が働いており、
一人のGPの受け持つ患者の数の上限が国で決められていて、
日本とは環境が全く違うので、簡単に比較はできないと思いますが、
部屋の内装など、患者さんにもっとリラックスして
診察時間をすごしてもらえるよう、
日本でも色々工夫できるのではないかと思いました。
さて、英国と日本の家庭医の一番の大きな違いは、
通常、家庭医の紹介なしには病院(各科の専門医)を
受診できないということです。
例えば、耳の感染症の「中耳炎」も、
皮膚の発疹も、日本では耳鼻科や皮膚科に行くと思いますが、
英国では、まずGPを受診します。
つまり「初めに患者さんを診るのは家庭医である」
ということが日本よりもはっきりしているのですね。
そして医療がすべて無料で受けられるのが
英国の国民医療制度のすばらしいところです
■ 英国の家庭医療がかかえる問題点
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しかし、このように家庭医を入り口とした
英国の医療制度を運営する上で
問題も多々あります。
必ず予約が必要になります。
子供や妊婦は病気が早く進行することがあるので、
優先して予約が取れますが、
大人が「ちょっと風邪引いたのでみてもらいたい」
と思って電話しても、
予約が取れるのが3日後、時には1週間後・・・
ということはしばしばです。
体調不良のときにすぐにかかれないなんて、
日本人の感覚ではとても不便に感じますが、
英国人は
「風邪のときは美味しい物を食べて寝るのが一番」
と言って、近くの薬局で買った市販の熱さましを
飲んで寝てしまいます。
このように一般的なウィルス性の風邪の場合は、
確かにむやみ病院で注射をしたり、
薬を飲んだりするよりも、
状況が許す限り寝て体を休めるほうが
理にかなっているとも考えられますが、
その他にも
「慢性の疾患でかかっているが担当医が半年後ごとに代わる」とか、
「家庭医から専門医に紹介されたとき、予約が数ヵ月後しかとれなかった」
といったというような日本では信じられないことも珍しくなく、
実際に医療制度として機能しているのか・・・という問題は深刻です。
現在、制度の改革が進んで、
以前よりも待ち時間が短くっているようですが、
患者さんにとって家庭医は強い見方なので、
制度の改革がより進んで、
より利用しやすい家庭医になって欲しいと思います。
■ 家庭医になるには
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英国では「内科」や「外科」という専門を専攻するのと同様に
「家庭医」という専門があり、初期の研修を終えた医師が
まず最低3年間の「家庭医」の研修を受けます。
通常、約1年半の診療所研修と、約2年の病院での研修が行われ、
その間に家庭医の専門医試験に合格すると
王立家庭医協会:RCGP(注2)という学会への入会が認められ、
さらに家庭医としてしばらく働いて、
もう一度試験に合格して初めて、家庭医の専門医になれます。
研修が終了すればいいというものではないので、
家庭医の専門医になるまでにかかる期間は医師によって異なります。
一方、日本では
●内科や外科などの研修、専門医としての
診療経験のある医師が家庭医として開業する場合と、
●初期研修の後、家庭医の研修を終えてから開業する場合と
主に2つの道があるようです。
前者の場合、内科などの専門医としての経験を生かしているので、
病院の専門医と同等のレベルの診療を受けられる場合がありますね。
どちらの場合も、家庭医としての研修制度(生涯教育)があり、
診療をしながら、医療の質を上げるために日々努力できるシステムがあります。
■私の医師としての目標
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皆さんは医師で道化師のパッチ・アダムスさんをご存知ですか?
映画「パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー」
(ロビン・ウィリアムズ主演)をご覧になったかもしれません。
アダムスさんは患者と医療者の人間的な関わりを大切にした
無料の診療所を運営し、
★医療の現場に愛と笑いと喜びをもたらし★
★人生の目標は延命だけでなく、生そのものを高めることにある★
という理念の下、診療所の医師として活動されています。
また、京都に松田道雄先生という町医者がいらっしゃいました。
松田先生は、
☆人間にいちばん大事なのは医療ではなくケア☆
☆親しい人の心のこもったお世話☆
と遺されました。
言葉では
「患者さんと信頼関係を築き、患者さん中心の医療を行う」
と簡単に言えますが、それを実践することは並大抵のことではありません。
そして、「心を尽くしてお世話し続ける」ということは、
さらにチャレンジングなことです。
でも、このような素晴らしい考えを日々の医療現場で実践されている
家庭医の先生は、過去にもそして現在も
世界中にたくさんいらっしゃいます。
私たちの目指している「ゆめげんクリニック」は、
○ そこに集まると、心もからだも自然と元気になる・・・
○ 地域のみんなが集まって、よりよい医療のためにワイワイ話をしている・・・
○ 地域の医療と生活に根ざしつつ、世界ともつながっている・・・
そういう場をつくりたい、という思いを込めています。
医療を取り巻く厳しい社会経済環境の今だからこそ、
「医療者と患者さん」という関係以前の
一人の人間対人間としてお互いの生を尊重し、
豊かな生を生き、生かされる、
そういう心を大切にする家庭医でありたいと思っています。
(くに)
人々の中へ行き
人々と共に住み
人々を愛し
人々から学びなさい
人々が知っていることから始め
人々が持っているものの上に築きなさい
しかし、本当にすぐれた指導者が
仕事をしたときには
その仕事が完成したとき
人々はこう言うでしょう
「我々がこれをやったのだ」と
(色平哲郎先生のご紹介;「人々の中へ」ジェームズ・イェン)
注1:WONCAは、正式には「World Organization of National
Colleges, Academies and Academic Associations of
General Practitioners/Family Physicians」の略ですが、
短く「World Organization of Family Doctors 」
の略ともしています。
注2:RCGP:Royal College of General Practitioners
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【3】ゆめげんドア
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今月のテーマについて更に詳しく知りたい方は、
次のウェブサイトをご参考にしてください。
■ 「世界家庭医機構」のホームページ
http://www.woncaeurope.org
■ 世界家庭医機構の提唱する「家庭医」
http://www.woncaeurope.org/Web%20documents/European%20Definition%20of%20family%20medicine/Definition%202nd%20ed%202005.pdf
以下、和訳例:
1.年齢、性別、疾患を問わず、医療的なケアを必要とする方に
最初に関わりをもち、包括的かつ継続的なケアの指針を立案する。
2.患者さん、その家族、地域そして文化背景を常に考慮したケアを提供する。
3.その患者さんを繰り返し診察ことによって得られた情報と信頼関係を尊重する。
4.患者さんの身体的、心理的、社会的、文化的そして今ある現象を統合しながら、
患者さん中心の治療方針を決定する。
5.家庭医の職務である、健康増進、疾病予防、疾患の治療・ケア・緩和を遂行する。
6.地域の健康増進に取り組む。家庭医の活動は、患者さんに直接的に
あるいは地域の活動から間接的に提供される。
7.効率的で安全なケアを提供するために、家庭医は自身の技術や価値を
発展させ維持しなくてはならない。
■ 日本家庭医療学会の目指す医療
http://jafm.org/html/syushi.html
■ 「パッチ・アダムス」のクリニック
http://www.patchadams.org/
*是非、ロビン・ウィリアムズ主演の映画もDVDなどでご覧になってみてください。
最初から最後まで、泣き笑いの連続です!
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● 編集後記:重圧と向きあう
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ゆめげんクリニック・プロジェクトのメールマガジン第4号は
いかがでしたでしょうか。
先月は、原稿や書類の締め切りに追われ、
また、「はじめに」にあるとおり原稿を追い立てる日々でした(苦笑)。
その中には、書類の不備や間違いがあっては困る、
細心の注意が必要なものもいくつか含まれていました。
毎日、それぞれの締切日を念頭に
スケジュールを見ながら作業をしていますが、
その日突然入り込んだ作業を優先してやらないといけなくなったり、
それ以外にも毎日のある程度決まった時間は
ルーティーンで取られるわけですから
限られた時間内でどうやりくりしていくか、
一言で言うと 『タイムマネジメント』ということになります。
これは、私にとって永遠の課題です。
なぜ課題なのかというと、時間の重圧に負けそうになるからです。
現実に向き合わず、言い訳を考えて、いつも逃げたくなってしまうからです。
先日、米大リーグ シアトル・マリナーズのイチローが
NHK『プロフェショナル 仕事の流儀』に出演しているのをウェブで観ましたが、
その時に彼が語っていた
“重圧に向きあうと決めた。向き合わなければ得られない「何か」がある”
という言葉がとても印象的でした。
技術を極め、すべてをその日のプレイのために組み立てて
仕事にのぞむ超一流のプロフェショナル イチローと
自分の仕事を比べるべくもないのですが、
同時代に生きる彼の言葉、流儀から学び、
まず自分に最低限課すこととしたら
「締切という時間の線を安易に乗り越えない」ということですね。
なぜなら、「人生最後の締切」は延長できず、
皆一生に一度しか乗り越えられないわけですから、
そう思うと毎日毎日の締切を安易にはできません。
一刻一刻の時と向き合い、己に刻みつけるように
時間を過ごしていきたいと思う2008年の最初の月でした。
さて、次号ですが、3月3日に
「ホメオパシー」
をテーマで発行する予定です。
次回も(予定日にちゃんと発行ができるか)どうぞお楽しみに!
(よし)
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