プレコンセプションとは、言葉の成り立ち的には、「プレ=前」「コンシーブ Conceive =宿る」の「ケア」、すなわち、「妊娠のための健康」という意味です。
しかし、実際には妊娠ということが目的ではなく、すべての若い世代の男女の健康維持を目的としています。
2006年には米国疾病予防医療センター(CDC)から、2013年には世界保健機構(WHO)がプレコンセプショナルヘルスケアの改善が必要という勧告を出したことから注目されるようになりました。
注目されるようになった主な理由としては、
- ~20歳代の生活スタイルの乱れ:やせと肥満が増加
- 結婚率低下、晩婚化、女性のキャリア形成:出産年齢の高年齢化、生活習慣病をもった女性の増加
- 不妊治療の向上:出産年齢の高年齢化、生活習慣病をもった女性の増加
- 医療水準の向上:慢性疾患を持った女性が妊娠可能になった
ことが挙げられます。
妊娠する前から男女が健康であることは、妊娠、出産の合併症を減らし、赤ちゃんが健康に育つには大切なこと。そのために若い男女の健康維持が大事です。
日本では、6%が早産、10%が低出生体重、2%が先天異常をもって赤ちゃんが生まれています。
また、周産期死亡(妊娠22週~生後1週間以内の赤ちゃんの死亡)の36%が母の病態が影響しているといわれています。妊娠前から妊婦となる女性のもっているリスク(たばこ、やせ、肥満、薬、感染症、病気)が妊娠、出産、赤ちゃんの健康に影響します。
とくに妊娠4週~9週はあかちゃんの器官形成期といわれ、この時期に赤ちゃんの臓器の下が作られるため、妊娠がわかった時にはその時期が過ぎていることが多く、妊娠前の女性の体のケアが重要です。
妊娠してからのケアでは遅いもの、として、例えば、以下のものが挙げられます。
・肥満
・やせ:日本は4人に1人やせ(BMI<18.5)
・慢性疾患:糖尿病、甲状腺機能異常、自己免疫疾患、高血圧、慢性腎疾患、抗リン脂質症候群
・感染症:BC肝炎、HIV、性感染症、麻疹、風疹、
20歳代の「やせ」は深刻で2003年から女性の体重が減るとともに、赤ちゃんの出生体重も減っています。赤ちゃんが小さく生まれると、その赤ちゃんが大きくなった時に成人病になりやすいことがわかっています。心筋梗塞、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドローム、脂質異常、神経発達異常などです。
女性がやせている理由として、メディアの影響が大きいといわれています。
私たちは幼いころからプリキュアを見たり、BMIが14~15%の雑誌のモデルや女優を見てあこがれてしまいます。最近外国では、やせすぎの女性を広告に載せないようにしたり、フランスではファッションショーのスーパーモデルに痩せた女性を使うと会社に罰金を支払うそうです。
また、やせている人の多くは、朝食を食べないそうです。全年齢の平均は、男性14.3%、女性10.1% 20歳台は男性25.6%、女性25.3%と高く、子供に朝食を出していない可能性があるそうです。朝食を食べないと早くに骨粗鬆症になり、妊娠合併症が起きやすくなり、早い時期に更年期になります。
若い男女が健やかな人生を送れるように、安全に妊娠、出産を迎え、そして、生まれてきた子どもが元気に育つように、以下のことを実践していきましょう。
- 健康的な体重を維持する、
- 食事は食バランスよく食べる(朝食を食べる)、
- ワクチンで予防できる病気のワクチンを済ませておく(特に麻疹、風疹)、
- 女性は基礎体温を記録する
- 病気がないか検査する(生活習慣病、性病)
院長 中山 久仁子