渡航先でかかる病気
- バンコクでのある風景
- 喜びの妊娠が悲しみと不安に
- ふたたび、バンコク
- 「知ること」の重要性
1. バンコクでのある風景
アフリカのマラウィ共和国に住んでいたとき、日本に一時帰国するためタイのバンコクを経由しました。
次の飛行機の時間まで数時間あったので、マラウィからタイまでの10時間以上のフライトの疲れを癒そうと、空港内にある「タイ式足つぼマッサージ」に行きました。
マッサージの部屋は、リクライニングの椅子が一列に並べられていて、10席ほどでした。
お客さんは年齢が20−60歳代の男女、様々な人種の方がいました。
スタッフはタイ人の女性でした。
ちょうど、空きが出たところだったので、私は5分ほど待つだけでマッサージを受けることができました。
「痛かったら言ってくださいね~」の声と同時に足首からマッサージが始まりました。
長いフライトで足は棒のように重くなっていたので、最高のひと時でした。
マッサージが後半に差し掛かった頃、アジア系の50台と30歳台の男性ニ人が私の両隣の椅子でマッサージを受け始めました。
しばらくすると日本語で会話を始めたのです。
「いや−、タイ人の女性はいいよなあ。」
「そうですね。」
「帰るときなんて、○○ちゃんが「行かないで」って、泣くんだぜ。たまんないよな。」
「病み付きですよー。」
もっと具体的な内容も交えて、部屋中の人が聞こえるほどの大声で、まるで人に聞いて欲しいかのように会話をしているのです。
それはタイで風俗に行った話でした。
見た目は極々普通のサラリーマン。
どちらかというと、マイホームパパのように、(私の感覚によると)とても風俗に行きそうにない感じの人たちで、
「そんな人が風俗に行くんだ・・・」
私には衝撃でした。
というのも、私にはその前にある忘れられない体験があったからです。
2. 喜びの妊娠が悲しみと不安に
日本で感染症科で働いていた時のことです。
ある日、妊娠で産婦人科を受診された女性が私の元に来られました。
妊娠に伴う基本検査の結果が、HIV陽性だったのです。
彼女はごく普通の家庭の主婦でした。
どこから感染したかについては身に覚えがなく、陽性と聞いて随分ショックをうけていました。
さらに、夫も陽性だとわかりました。
更には夫が風俗で感染してきたものと知ります。
信じていた夫に裏切られた気持ち。そして、病気への恐怖で、かわいそうなほど落ち込んでいました。
妊娠という喜びの知らせが、こんなにも辛い結果をもたらしてしまうとは・・・
この経験はしばらく私の頭から離れなかったです。
3. ふたたび、バンコク
私の足つぼマッサージが終わり、部屋を出るとき先の男性たちの会話で最後に聞こえたのは、
「次が楽しみだな!」
でした。タイでは、1984年初めにHIV陽性患者が発見され、その後、ゲイ、麻薬の針、性産業を通じてHIV/AIDSが広まった国の一つでした。
1989年にはバンコクの性産業に従事している女性の実に“44%”がHIVに陽性であることがわかりました。
その後、国を挙げての取り組みが功を奏して2005年からは新規感染者の人数は減っています。
しかし、私が訪問した2003年は、年間25,000人が新たにHIVに感染し、そのうち80%が性行為による感染という状況でした。
4. 「知ること」の重要性
もちろん、コンドームを使って感染予防しているかもしれませんが、このような状況の旅先で性産業を気軽に訪れるなんて、私には理解できなかったのです。
性行為による感染症はHIV/AIDSだけではありません。梅毒やりん病、性器ヘルペス症、クラミジア感染症など多種にわたります。
また、病気によってはすぐに治るものから、重篤な後遺症を残す可能性があるものまであります。
渡航先では、日常生活からの開放感から、無防備な性交渉を行いやすいという報告もあります。
しかし、渡航の前には少なくとも現地の感染症情報を知ることが大切です。
そして、その上で自分の将来、大切な家族のために、
『男性も女性も』
自らの行動を律して、渡航先での病気には十分に注意していただきたいと思います。
参考文献
更に詳しく知りたい方は、次のウェブサイトをご参考にしてください。
アバンチュールは性感染症への誘い?:英国男性のHIV感染者、7割が海外での性交で感染 (日経メディカル・オンライン 2004.7.28)






